昨年、令和の幕開けは台風災害にみまわれ波乱の年となった。台風15号、19号は関東地方とりわけ、千葉県において大きな被害をもたらした。台風が日本の近海で発生し、今後も日本に上陸する可能性が高くなっていることが地球温暖化の影響であるとも言われている。地球温暖化の問題は少なくとも30年前から騒がれていたにもかかわらず、その対策が進んでいなかったのが現状である。
文応元年(1260年)、日蓮聖人が鎌倉幕府に対して『立正安国論』を著し進言したきっかけとなったのは、大地震、台風、大飢饉、疫病、彗星出現等の自然災害が度々発生したことによるものであった。日蓮聖人はすべてのお経文に照らして考えたとき、幕府の政治も仏法の是非を問うことなく、邪宗が世にはびこり正しい教えが用いられていないことにその原因があるとされ、さらには他国から敵が攻めて来て、国内にあっては反乱がおこる前兆であると予言されたのであった。
『立正安国論』を著してより足掛け9年、蒙古より国書が届き他国からの侵略が現実のものとなった。自然災害の発生が国土を破壊し強いては仏法をも破滅に至る結果にならないようにと警告したのであった。今日の地球温暖化の問題はもはや単に自然現象ではなく、社会経済の発展を追求するためにもたらされた人為的結果であり、早急に対処しなければならない人類が生き残るための課題である。
令和2年 元日
日蓮宗本山 池上 大坊 本行寺
住職 中野日演